片山正通さん(後編)
最終話となる後編のインタビューはデザインを通じて社会とどう関わるか、片山さんの考える「ポピュラリティーを得ること」とは?、片山さんがデザインによって「作りたいもの」、世界を舞台に仕事する際のスタイルや今後の展望などを伺った。(聞き手:近浦啓 / 写真:近浦啓/ 収録:2007年8月7日)
パッと見た瞬間に感じる楽しさ
―片山さんは「デザイン」を通じて、社会に対して何を発信したいと考えていますか?
デザインあるいは僕らの仕事は、お店やブランドと社会の間のコミュニケーションにおいて、少しでも大きな声でお店やブランドを代弁するような行為だと思うんです。的確な情報を発信すると同時に、デザインという楽しい仕事をさせてもらっている幸せとその楽しさを、世の中に還元したいと思っています。なので、僕のデザインが存在して本当に楽しいものかという点はいつも真剣に考えています。
―ポップでいること、あるいは、ポピュラリティーを得ることに対してどのような考えをお持ちでしょうか?
先ほどのことと関連していますが、一人でも多くの人に僕の創り出すデザインで、そうした楽しい、嬉しいという感情を持ってもらいたいと思っています。また、僕は自分がかっこいいと思うものでも、消費者に楽しいと思われないようなものはつくらないようにしているんです。消費者にお店のコンセプトを聞いてもらう機会も、それを彼らに説明する機会も、僕にはありません。だからこそ、パッと見た瞬間に感じる楽しさを大切にしていますし、その楽しいという感情がポピュラリティーを得ていくのではないでしょうか。
"形を作るのではなく、ムーブメント、シーン、時間、体験を作りたい"
―デザインの中でも、グラフィックデザインやWEBデザインではなく、インテリアデザイン・空間デザインということに絞って考えた時に、片山さんがやっていきたいこととはどのようなことでしょうか?
形を作るのではなく、ムーブメント、シーン、時間、体験を作りたいと思っています。また、インテリアデザインを通して、社会とどこかでつながりたい、人と人をつなげていきたいという思いがあります。もちろん、お店がビジネス的にも成功することも重要です。インテリアデザインという分野で仕事をしているのであって、僕がしたいことをする訳であはりません。ですから、お店が繁盛していると聞くと安心します。
―作品集「Wonderwall Masamichi Katayama Projects」はとても素晴らしくて、見るだけでも非常に充実した気持ちになるんですけど、片山さんの空間はやはり目で見るものではなく、身体で体験するものだと思います。あくまで推測ですが、消費者としての片山さんの感覚、つまり片山さんの個人的な買い物の経験なんかが、空間デザインにとても活きているんじゃないかと思います。
それは確実にそうですね(笑)。買い物が大好きなので、消費者としての感覚は大いに活きています。僕だったら、ここで振り向いたときにこうなっていたら欲しくなる、といった風に考えるんです。考えていると、どんどん他人事じゃなく、真剣になってくるんですよ(笑)。
―空間を作っていく上で、当初想定していたものと出来上がりが全く違うことはありますか?作っている途中で方針が変わってまったく違うものができたり。
「作ったらどういうものになるのか?」と自分が想像できないものは作らないようにしています。100%イメージできて、理解できるものしか絶対に作らない、そこは僕のこだわりです。ですので、デザインの構想段階とプレゼンテーションの段階で、全く違うものが出来上がるということはありません。プレゼンテーションの時も、ベストだと思う一案だけ持っていきます。その案を模型にしますが、実際出来上がるものとほぼ同じものが多いですね。具現性のあるイメージを持つプロセスにおいては、妥協はしません。妥協は僕の性格的に無理ですから。
―インテリアデザインという仕事以外に趣味はありますか?あるいは、仕事そのものをとても楽しんでいるように思えますので、仕事自体が趣味に近いものでしょうか?
「趣味何ですか?」って聞かれたら、「音楽鑑賞です。」とか「映画鑑賞です。」とかすごく普通に答えます(笑)。好きな事をしているという意味で言えば、インテリアデザインは趣味と言えば趣味ですね。ある意味趣味と思っているから真剣にできるのかもしれないですね。逆説的な感じですけど。
僕は、自分が見てみたいと思うものを自分で作る事ができる仕事をしているのは幸せですね。それがプレッシャーでもあるんですけど。この仕事は、謎解きゲームみたいなものなんです。クライアントが発する数少ない言葉の中から、本当にしたい事が何かを探るのが最大の仕事なんですよ。例えば、NIGOさんも言葉少なく語る方です。それを読み解いていくのがとても楽しいですね。
"良いと思う事をナチュラルに表現すればいい"
―A Bathing ApeのN.Y.店やユニクロのN.Y.店、今後どんどん海外のお仕事が増えると思うんですけど、海外の方から認知されたり、交流を持つきっかけはどのようなものなのですか?
今は海外での日本ブームが強いので、ラッキーなことに、日本人の評価ってすごいニュートラルに受け入れられるようになったんです。例えばルイヴィトン、グッチ、プラダなどは世界のどこに行ってもあるじゃないですか?じゃ、東京に来た時に、「東京にしかないブランドは何なの?」という話になると、たまたま僕がデザインさせて頂いたお店が複数候補にあがって、そのデザイナーは誰だろうって話になる。それで「片山って面白いね」と思われるみたいで、びっくりするような人から「会いませんか?」とお声がかかることもあります。それで会ってみると、すごく良い人が多い。結果、結構かわいがられたりするんですよ。だから、僕個人を知っていて交流が始まるというよりは、デザインを知って頂いていて、交流が始まるケースがほとんどですね。ただ、僕をかわいがってくれる人たちって、とても良い意味で「ややこしい人」が多いんですよ(笑)。みんな面白いんです。そういった人達から得るものってすごく多いんですよ。
―日本を離れて、世界を舞台にデザインを手がける際、特に意識していることはありますか?
特に意識するというよりは、逆に世界ということをあまり意識しないほうがいいかなと思っています。ユニクロの時もそうだったんですけど、背伸びして着飾ってもしょうがないと思うんです。ユニクロの良さや強みって、日本人的な合理主義や、品質が良くて安いとか、何でも揃ってるとかそういう当たり前のことだと思うんです。それって日本でもアジアでもヨーロッパでも変わらない価値観だと思うんです。あまり海外だからとか考えないようにして、良いと思う事をナチュラルに表現すればいいかなと思っています。
―今後の片山さんの展望を聞かせてください。
デザイナーとして、世界のどこかで面白い仕事があればしてみたいと思うし、その為に世界で通用するデザイナーとしてランク入りしたいなと思っています。
例えば、アメリカのプロジェクトがあったら「パリの誰々とN.Y.の誰々と、日本の片山を呼んで話を聞きたい。」という位置に入っていきたいと思っています。海外からデザイナーを呼ぶには、距離がある分お金がすごくかかりますが、それを吹き飛ばしても「片山に作って欲しい」と言われるデザイナーでありたいと思っているんです。少しずつですが、今まさにそういう形になってきていて、自分でも嬉しい気持ちでいます。その分プレッシャーもすごいんですが、それも楽しんできいきたいと思っています。
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片山正通さんに関する最新情報はWonderwall.IncのWEBサイトでご覧頂けます。
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