女優 山咲千里

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山咲千里さん(中編)

インタビュー中編では、時代を意識するようになった理由、「感じる心」が強いことが伝わってくる山咲さんの「幼少の頃のエピソード」、山咲さんにとっての「美容」とは?、「自由」について感じていることなど、率直に語って下さった。
(聞き手:近浦啓(クレイテプス) 写真:TOMOYO / 収録:2008年2月28日)

"しっかりと泣く時があるからこそ、再び光ある明るい世界へ歩いていけるのだと信じています"

ー「美神伝心」を読んでいて、元々「伝えるべきもの」が山咲さんの中にたくさんあるのだろうということを非常に感じました。山咲さんのように、皆が皆感動するタイプではないですし、感動を忘れた人だっていますよね。山咲さんの生活の中でそういう感動するポイントというのは溢れているものですか?

命を大切にして生きると感動は増してくるのではないでしょうか。
例えば、明日生きているかどうか、それを当たり前と思うかどうかで個人個人の感動の体質のようなものは変わるように思います。
人の性格について思うのは、全ての人に明るい部分と性格の暗い部分の割合があって、100%明るい部分で生きようとすると疲れると思うのです。
私はその点、ブログを記録する際にも、性格の明るい部分ではなく、暗い部分を反転させてものを見つめています。
矛盾するようですが、自分の暗さとはコンプレックスだったり、幼い頃のトラウマのようなもの、それを克服するのに日記形式(ブログ)が、本来の性格の明るさを引き出す修練になっています。
落ち込むことがあったとしても、それをもとに明るくなるというのが心の訓練になり、感動体質を作ります。また、泣いたりするようなことが、心の弱さではなく、人への優しさを育むきっかけにもなります。人生で、感動を増やすには、しっかりと泣く時があるからこそ、再び光ある明るい世界へ歩いていけるのだと信じています。

"幸せとしての意欲を女性性に保たせたいのです"

ー感動とは「時代」についてどう思うかにつながりますか?

私がいつも本の中で「時代」という言葉を多用するのは、今を生きる自覚を持とう!というモチベーションを伝えたいからなのだと思います。
時代性なんていう、見えるのか見えないのかわからないものに対して、私達は昔の人と比べて、未だかつてない時間を経験しています。コンピューターの出現により、便利になったことが、逆に生活を複雑にしていたりなどがそうです。
私にとっても「時代」の把握というのは、例えるなら電車に乗って窓から見えては流れていく景色のようなものです。
美容ひとつにしても、生活の中のたった1コマの小さな存在です。そこに「時代」を感じるモチベーションを上げるとするなら、流れては消えていく情報を使い捨てにしない方法が必要です。どう心やカラダにとどめておくかという、義務ではなく、幸せとしての意欲を女性性に保たせたいのです。

ー美容のことだけを表面的な見え方だけで追っていたらこの本は絶対に書けないだろうと思いました。本を書くためやブログを続ける上で、どうやってアンテナを張っていますか?

いろんなことに関心を向けているのは、おそらく生きている「ありか」が欲しいんだと思います。誰かがすごく活躍をされていたり、物事が生き生きと動いている様子を見ると、自分も「生きている」と感じられる。受身ですけれど、死んでないと感じられます。
テレビに出ていた頃、ずっと自分から何かが抜かれていく感覚があって、とても変な時間でした。雑誌や本は後に残る仕事をさせてもらっていますけど、テレビなどで、そこにいない自分が今、画面に映っているということは、ちょっとおかしな感覚になるのです。これからyoutubeなどで、皆さんが自分の動画をアップして自分自身で見ることが増えていったら、私の言っているこの感覚をわかってくれる人も増える気がします。自分は家で横になっているのに、そうじゃない自分が画面の向こうでしゃべっていたりする。それを見ていると自分の分身をだるま落としみたいに「抜かれる」ような気がしてました。

"考え方を学ぶのに、感じ方を優先していた"

ー山咲さんは昔からそういう「感じる心」が強かったんですか?

はい。そうみたいです。小学生の時、算数の時間に「1+1はなぜ2なのか」という考え方を学ばされた時もそうでしたが、考え方を学ぶのに、感じ方を優先している子供でした。1+1は足しても1と1という集合ではないのだろうか・・・という、ある意味大人から見たら頭のカタイ子だったのでしょうが(笑)、本人は今も子供の時のその感受性を、クリエイティブな部分に生かせることを幸せに思っています。

ーお話を聞いていて、おそらくそういうところが今の山咲さんに繋がっているんだなと思いました。最初にこの「美神伝心」を読んだ時に抱いた感想が「これは普通の人には絶対書けない。」ということだったんです。

みんなと変わらないと思います。「思ったことを人に言って、変だと言われないかな?」とか、いつもそういう怖さを持って人前に出ているんです。自分が選んだ洋服やメイクが皆と違い過ぎていたらすごく恥ずかしいと思いますし、怖いと思うことはたくさんあります。でも「あなたはクリエイションしてもいいのよ。」と言って頂ける仕事の時は、そこに全く怖さや迷いが無くて、「きっとこれがいいぞ。」と自信を持って思えます。

ー僕らが雑誌のこちら側や、時にはテレビのこちら側で山咲さんを見て感じるイメージは、全然違うところにあるんですね。

一致している必要はないと思いますが、今では私の周りにその差を理解して、素の私を受け入れてくれている人に恵まれているので、孤独ではなくなりました。

"「私」を伝えるためのキャンパス"

ー「美神伝心」の中で「美容とは」ということが書かれた項目があって、そこに「美容は本来、自分とはどんな人間かを知るためにある」ということが書いてありましたが、その精神がこの本の全編に貫かれているなと思いました。山咲さんにとって美容、美しさというのはどんな意味を持っていますか?もちろん女優という仕事としての強烈な使命もあると思うんですけど、仕事以外の女としての美容の意味はどんなところでしょう?

アートに近いものがありますね。メイクアップひとつにしても、目の形だってアイラインや道具でどんどん変えていける、そんな状況を多くの女性が享受しているのを頻繁に感じますね。若い女性は自分の顔について可能性を試すようにメイクできますし、私のような40代になりますと、それまでの生き方を知らせる画面情報をインスタレーションできるのも「顔」なのです。それは、アートとして「顔」が表現としての媒体として成立しているということで、「私」を伝えるためのキャンパスだと世の中の女性達もよくわかっているのです。もれなく私もその一人である訳です。

ーなるほど。メイクアップの部分のお話は男性から見てもとても新鮮でした。僕はなんとなく、メイクには、いろんなテイストがあるにしてもとても一面的な感じがするものだと思っていたんです。それが「美神伝心」では、その日によってメイクを変えること、例えば「まぶたにキスして欲しい日にはこういう風にメークするんだよ」、「恋愛の最初の頃はこういう風にメイクするんだよ」というようなアドバイスが書いてありました。それを読んで一面的なものじゃないんだなと思いました。

デートのことを例に本文に書いていった章がありますが、それは「デート」というイベント性が個人の表現としてのメイクアップで大変自由度が高いからです。 仕事の立場や子育てで忙しい時に、女性が自由にメイクをできるとは限らないのを、私は痛いほど理解してるつもりです。

"私には自由と変化は隣り合わせにあります"

ー「変化する、変身する、そういうことは女性にとって、とても大きな意味を持ってる」ということも書かれてましたが、言葉として僕がとても好きだったのがそれを「自由だ」と表現されていたところです。すごく感動しました。やはり、山咲さんの中にそういう感覚はあるんですか?

自由というものは奪われた時にわかるものです。また誰にとっても言えることは、いつも「絶対に自由だ」ということはありません。自由だと思うことは勝手なんですが、完全な自由というものはないということが世の中です。では何が自分の自由を阻んでいるのかということが浮き出てくると思うのですが、阻んでくるものが見えてくるから「ちょうどいい自由」になる。「今、自由だ」と感じられるのは、普段嫌なことや被さってくるような状況があって困るからこそ感じる、それは例えると「個室にいる」ような感覚です。この自由への望みを趣味で発散する人もいれば、仕事でできる人もいます。
閉じ込められた自由を、個人はいつも自分の責任で解放してやらねばなりません。誰かをあてにしていては自由は得られないということなのだと思います。ただ、それはそんなに難しいことではなく、きついサイズのハイヒールを脱いで、たまにスニーカーでウォーキングするというような気分転換のようなことでも得られると考えます。そしてそれが、「変化」を促すアクションになっていたりするのではないでしょうか。私には自由と変化は隣り合わせにあります。

"気をつけなくてはならないのは、
心の持ち方が見た目を支えるという点です"

ーその話に関連して、「何かの制限があって、それを通り抜ける時こそキレイになるチャンスだ」というようなメッセージが書いてありましたよね。「なるほどな」と思いました。つけまつげのお話の部分でも印象的だったのが、「初めてパーティにつけまつげをつけていくなら、前日からつけまつげをつけたまま過ごしてみる、そのうち、つけまつげが顔になじんでくる」というようなところです。面白いですね。美しいものを身につけているとそれに合わせて顔がつられてキレイになるようだという話が・・・。

そうなんです。宇宙がすべてキレイな方へキレイな方へ進化してきたのと同じで、女性の美意識もキレイになりたいという引力で、成長していきます。

ーそれとそのつけまつげの話をされていたところで、「宇宙があるかぎり、女性の顔はキレイな方へ行く」というようなことが書かれていたのがとても印象的で、鳥肌が立つほど感動しました。

気をつけなくてはならないのは、心の持ち方が見た目を支えるという点です。心+カラダという表面が1セットで「キレイ」であるという考え方です。ありきたりですが、この考え方はこれから何年経っても、変わることのない「美」の基本線なのではないかと思っています。(次週、後編に続く)
◆ 山咲千里さんのOfficial blog "美神伝心"も毎日チェック!

美神伝心 発売!

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