藤竜也

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藤 竜也さん(後編)

インタビュー後編では、藤さんが長年役者という道を続けている理由、「映画を創る人々は皆仲間だ」という意識、藤さんのオフの日々の過ごし方、藤さんの目から見た「映画の現場」について、など様々なお話を伺った
(聞き手・写真:近浦啓(クレイテプス)/ 収録:2008年2月23日)

"きっと全然満足してないんですよ"

―毎年「今年はこの二本の映画か」などと思いながら、藤さんの映画を観ています。ファンや観てる側からすると藤さんが今も絶やさずにスクリーンの中に居続けていらっしゃるのを観られるだけで、とても嬉しいんです。
藤さんが20代の頃、1960年代に映画界にいらっしゃった方々全員が今もスクリーンにいらっしゃる訳ではないですし、そういう意味では継続はとても難しいのだと思います。藤さんが、役者という道を外れずに今まで来られたその志というのはどういうものだったんでしょうか?

満足していないからじゃない?きっと全然満足してないんですよ。“かたがついてない”わけですよ。一生かたはつかないでしょうね。いいんです。それで。かたをつけようと思ったら、大袈裟だけど最後まであがくというか、落とし前をつけないとと思いますね。みんなそうなんじゃないでしょうか。もう、かたがついたと思ったら、面倒くさくてやらないね。“かたがついてない”と思うから、役者をやり続けているんです。

―今回の映画「窯焚-KAMATAKI-」の炎じゃないですが、藤さんの内にある炎は、「映画に対する愛情」であったり、そういうものですか?

炎っていろんなものを想像させるよね。火は必ずいつか消えていくしね。燃料が無くなるから。琢磨の台詞じゃないけれど、強すぎてもいけないし、弱すぎてもいけない。

" 僕らは皆、仲間だからね"

―ある雑誌の藤さんのインタビューで、とてもいいなと思ったことがあったんです。いつの時代もそうですが、今の時代のことを批判的にとらえるということは、どこの業種でもあると思うんです。映画界でも「今は日本映画が元気だ」と言いつつも、「くだらない映画が多い」といろんな所でいろんな人が言っています。僕は映画館がとても好きで、どういう映画であれ、そういう言われ方をするとあまり良い気持ちがしません。 そんな中、藤さんは「そんなことはない。いろんなプロセスを経て来た結果だからそれは肯定的に捉えたい」というようなことをおっしゃっていたのが印象的だったんです。
やっぱり60年代からずっと映画界にいらっしゃって、映画界の変化もあったと思うんですけれど、それを良いように捉えられるということは、非常に素敵な感覚だなとその時共感したんです。年齢を重ねると今の世代のものを否定したくなる人も多いんじゃないかと思うんですけれど。

たくさんの人達が集まって苦労して創りあげたものをね、貧しいかもしれない自分のものさしで「良い」「悪い」なんて言えないですよ。僕自身は、自分にそれほどの自信はありません。映画も人間と同じだと思いますよ。もし多くの人が嫌いでも数人の人が「俺はあいつ、好きなんだよ。」と言うのと似たようなものじゃないですか。また内心はどう思ってても、散々に文句言ったら、言っただけその時間が損しちゃうでしょ(笑)。
僕は「俳優」という担当があるんだし、「良い」とか「悪い」とかは評論家がいる訳だから思う存分そこで批評してもらえばいいと思いますよ。僕らは皆、仲間だからね。

" 次の仕事のことしか興味がないんですよ"

―「仲間」って良い言葉ですね。日本の映画界が変化してきていると感じますか?

それは感じないなあ。あまり考えていないからね。以前ある所で、「日本の映画は年に400本作られてる」と聞いたんですよ。その後、また違う誰かが「表面に出てきたものが400本で、お蔵入りしてまだ表に出ていないものもいれたら800本だ」と言われてましたよ。
そういうことなんでしょうね。チャンスがあって良いことじゃないですか。映画を好きな様々な人達が、世に出るにしろ出ないにしろ、1本の映画を創れるというのは良いことですよ。そして映画が少し息を出来るだけの受け入れ側が整っているんだし。前は、映画観るんだったらテレビ…というような時代もありましたからね。今は映画の世界で何かしら遊べるということでしょう。

僕はそういうことにあまり興味がないし、そういう立場じゃないからね。僕は次の仕事のことしか興味がないんですよ。

―出演されている映画というのは何かしら共感できるとか、そういった理由で決められることが多いんですか?

それはそうです。本を読ませてもらったりして。その判断基準は言葉では説明できませんね。何か感ずるところがあるんです。まあ、勘ですね。

―大体いつも、次回作の準備があったり、撮影に入られていたりするかと思うんですけれど、気が抜ける時というのはあるんですか?

ありますよ。今年はひょっとしたら、あと2本位映画の撮影をすると思うけれど、それが終わったら秋位からは何も入ってないですからね。

"妻がいる気配がある空間で本でも読む、
そういう時間が一番良いね"

―そういう時に今回の映画のように陶芸をされるんですね。

ええ。陶芸もやりますし、何もしなかったりもします。妻がいる気配がある空間で本でも読む、そういう時間が一番良いね。

―僕は、役者の藤さんに浸ってきたのでリビングルームでだらっとしている藤さんというのは思い浮かべようとしてもなかなか想像がつかないですね(笑)。

しますよ。だらっと(笑)。

"横浜の片倉町の小さな居酒屋、いつでもここから始まるんですよ。そしてそこに帰っていくんです。"

―今回の「窯焚-KAMATAKI-」も海外の映画ですが、藤さんは海外の映画に参加したいという気持ちはあるんでしょうか?

どうしても海外の映画をやりたいということではないですよ。僕はそんなに経験ありませんからね。
ただ、映画の現場では、みんな目的が「いいものを創りたい」ということ。その目的があるから、映画の現場というのはとてもピュアですよ。ジェンダーの違いもそれほどないし、年齢の違いも気にならない。一つの目的に向かって何かをやっていくということは気持ちがいいですよ。働く場所としてね。

―今日お話を聞いていて、藤さんは本当にとても自然体なんだと感じました。

いやいや、僕もたまに堅くなっちゃうんですよ。だから、「酒飲みのおっさん」というのは、僕の一番大事なスタンディングポジションなんですよ。横浜の片倉町の小さな居酒屋、ここから始まるんですよ。いつでも。そしてそこに帰っていくんです。

しあわせのかおり

中谷美紀さん、藤竜也さん出演の"おいしさ香る"映画「しあわせのかおり」が今秋公開予定!
中華料理店の料理人・王さんを演じる藤竜也さんは4ヶ月以上もの調理レッスンを行って撮影に挑んだという意欲作!
パーソンアップでも「しあわせのかおり」スペシャルインタビューを今夏アップ予定です!どうぞお楽しみに!

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