浦嶋りんこさん(中編)
インタビュー中編ではDreams Come Trueの吉田美和さんとのユニット・FUNK THE PEANUTSの活動に至るきっかけや当時の心境、ミュージカル「RENT」との出会い、「つながっている」ことを感じた不思議なエピソード、いろんな感性を吸収することの大切さ、ブラック・ミュージカル・コンサート「Sing,Harlem,Sing!」にまつわるN.Y.での衝撃的な経験など、興味深いお話をたくさん伺った。
(聞き手・写真:近浦啓(クレイテプス)/ 収録:2008年6月9日)
"運は全部使い果たしたと思いました(笑)"
―それから、Dreams Come Trueの吉田美和さんとのユニット・FUNK THE PEANUTSの活動に至るまでというのは、久保田さんのところでのバックグラウンドヴォーカルの活動などが業界の方に認められて・・・というような流れだったんでしょうか?
久保田さんのお仕事で知り合ったスタッフの方が「今、ドリカムがオーディションをしているよ。一般公募でコーラスを募集しているんだけど、りんちゃんも受けてみたらどう?」と薦めて下さったんです。実は、その頃、私はまだドリカムを知らなかったんです。当時は洋楽しか聞いていなかった時期で、邦楽に背を向けていた感じでしたから、全く知らなくて・・・。日本でもの凄く人気のバンドで、ヒット曲もたくさん出ていたということさえも知らなかったんですよ。
でもオーディションを受けてみることにしたんです。オーディション自体、初めての経験でした。それでも受かったんです。
―そうだったんですね。外側から見ると、久保田利伸さん、Dreams Come Trueさんと超一流の方ばかりとお仕事をするというのは凄いことに映ります。
凄いことですよ。これで運は全部使い果たしたと思いました(笑)。
"好きなものだから一生懸命長く続けたいと思う"
―(笑)。いろんな偶然も重なっていたかもしれませんが、「何か」があったんでしょうね。人との出会いだったり、無意識にできていた何か秘訣であったり・・・。
人との出会いというのは大きいでしょうね。何年かこの仕事をやってきて思うのは、人を騙すとか、そういう根性の悪い人には、良いことはやってこないでしょうね。
周りの人との関わりはとても大切で、人として周りときちんとつきあっていける力がないとダメですね。例えば、性格があけっぴろげで、荒っぽくてがさつだけれど人に好かれるという人もいれば、とても繊細で友達になるのはちょっと難しいという人もいて、いろんな人とお仕事のお付き合いはあります。当然、仕事ですからそこで好きか嫌いかだけで何かを判断するということはできません。
私にとって音楽は「好きなもの」で、「これは仕事」として捉えていたものではないですが、好きなものだから一生懸命長く続けたいと思う。だからこそ苦手な人とも上手く付き合っていこうとすることを仕事を通して学ばせてもらった気がします。それを秘訣だとするならば、そう言えるのかもしれないですね。
この時代、人付き合いなどしなくてもやっていける仕事は確かにたくさんありますけど、できることなら人と関わって仕事をした方が良いと思います。普通に人と対話ができる性質を育むというのがチャンスを掴むコツなのかもしれません。
"面倒だと思わずに言い続けてくれた人がいたおかげで、自分が今こうしていろんなことをジャッジできる"
―そういう人との関わり方という部分は、大人になって勉強して身につくということでもないように思います。人間関係において、適切な間合いなどをとりつつ誠実に対応できるということは、子供の頃から培ってこないとなかなか難しいんじゃないかと。
そうなのかもしれませんね。子供の頃から親に口うるさく教えられたことというのは、自分が社会に出て一人で生きるまでは、うざいとか思いがちですけど、そうやって面倒だと思わずに言い続けてくれた人がいたおかげで、自分が今こうしていろんなことをジャッジできるような気がします。親に反発している時って「これって親の言ってた通りだな。」と思う度に悔しいんです。悔しいんだけれども、実はその通りなんですよね。
―その後、FUNK THE PEANUTSの活動で、お茶の間に顔が知られることになった訳ですが、その時の感覚というのはどういうものでしたか?
一人で人気を得た訳ではないので「あくまでお手伝い」という意識は変わらなかったです。私がこれまで勘違いしないで生きてこれたのも、FUNK THE PEANUTSというグループだったからだと思うんです。もしも、自分一人で何かでヒットしたり人気が出たとしたら、自分のバランスを取りにくい状況になっていたかもしれません。“ファンピー”はそもそもDreams Come Trueがあって、私がバッキングコーラスをやっていて、そこから波状してできたもの。大きな根本にDreams Come Trueの仕事があったんです。だから、あまり誤解しないで生きてこれたと思います。当時、親戚が増えたということはありましたけど(笑)。
―FUNK THE PEANUTSが出来たのは自然な経緯だったんでしょうか?
吉田さんと声を合わせているうちにどんどん楽しくなってきたんです。吉田さんが「決戦は金曜日」のエンディングにあるような、シャウトしあって歌い合わせていくことの延長線上で、もっともっと二人でそれを増幅させたようなことをしたいと思われたのだろうと思います。そういうことがFUNK THE PEANUTSが始まる基になったと思います。
"「つながってる」ってことですよ。"
―ミュージカル「RENT」に出られたのはその後ですか?
そうですね。
―その時が初めてのミュージカル出演になるんですよね?それまで、ミュージカルでの活動はあまり視野に無かったですか?
全く視野に無かったです。どちらかというとミュージカルが苦手な方でしたから。「ミュージカルってどうしてあんなに急に歌いだすんだろう?」なんて思ってもいましたし。その頃は私自身、ミュージカルのあり方がよくわかっていなかったんです。
そんな頃、N.Y.のドリカムの吉田さんのお家に遊びに行った時、吉田さんに「りんちゃんさ、ミュージカルあまり好きじゃなかったみたいだけど、ブロードウェイのミュージカル、一度観てきたら?」と薦められたんです。
それが「RENT」でした。それでニューヨークのブロードウェーで初めて「RENT」を観たんです。歌が皆すごく素晴らしくて、「人をこれだけぐっと惹きつけるこの感じって何なんだろう?」と思いながら観てました。そして「もしこの出演者の中で自分が役をやるとしたら、どの役だろう?」とふと考えました。ジョアン(日本版ではジョアンヌ)という役でした。それが私にとっての初めてのミュージカルの経験でした。
―そうだったんですね。初めて観たのが「RENT」だったんですね。
そうです。その後帰国して一ヶ月後に、「RENT」再演の出演オファーを頂いたんです。とても驚きました。さらに面白いことに、オファーを頂いた役はジョアンだったんです。
そのときに、「なるほど、こういうことか。」と分かりました。
―どういうことですか?
"つながってる"ってことですよ。
久保田さんのバッキングコーラスで初めて使ってもらう前にも、似たようなことがありました。アマチュアバンドで活動していた当時、マネージャーが久保田さんの代々木の国立競技場でのコンサートのチケットを入手できて、バンドのメンバーに2枚持ってきたことがあったんです。
他のメンバーが都合がつかず、ギターの子と私の2人だけが見に行くことができて、その時に、マネージャーからは、「これは遊びじゃない。勉強するために行くんだから、盛り上がってばかりいないで、しっかり見て来なさい。」と言われました。アリーナの通路沿いの席だったので、通路に少し出ながらも、とにかくじっと見ていました。
その時も同じように思ったんです。「私は代々木のこのステージに久保田さんと同じ位置に立って歌うことは無理でも、あの後ろには立てるよね」と。そう思って観ていた後にオファーが来たというのは「なるほど」と思いました。そしてこの「RENT」のこともあったので、こうして人生はつながっていくんだなと改めて感じたんです。
"チャンスは目の前を通っていくものだから"
―とても不思議ですね。
今いる自分の位置が不明確であれば、そういった目標になるようなものを観ることで、「そこにフォーカスを当てなさい」という意味がそこにあるのかもしれないですね。そうすると今いる自分のスタンスからなんとか向上しようと、また違うアンテナを張りだす。それが自分にとっても良いことでしたし、技術的にテクニックを磨くということだけでなく、いろんな感性を吸収するということはとても大事なんだと感じました。そういうことはお仕事の中で何度かあるので、そういうサインをこれからもずっと捕まえていこうと思います。人との関わりはとても大事だということをお話しましたけど、それと同じようにチャンスは目の前を通っていくものだから、きちんと捕まえないとだめですよね。例えば占い師さんに「あなたは大成します」などと言われても、あくまでその可能性があるということ。それを実現するにはものすごく努力しないといけないんです。今の仕事をしている中でも、安穏と生きているだけではいろんなことがこぼれて、なくなってしまったりする。だから、頑張っていつもそれをかき集めて、形にして、それをクリエイトしていかないといけないと思ってます。
"この教会に行き着くまで、何も知らなかった"
―胸に響きました。次に、ブラック・ミュージカル・コンサート「Sing,Harlem,Sing!」のお話を伺いたいんですが、浦嶋さんが特別出演される予定ですよね。浦嶋さんはゴスペルなどをずっとされているようなイメージを持っていたんですがそうじゃないんですよね。それでも、アポロシアターやアフロアメリカンの音楽のルーツといったものは体に馴染むということはありますか?
やはりソウルやR&Bを歌おうと思って、コピーをしたことがある人というのはきっと誰しもアフロアメリカンヒストリーを音楽を通して学ぼうとするのではないでしょうか。私もそうでした。
「なぜ彼らがアメリカで歌を歌っているのか?」というのを知るべきだという想いがあって、憧れのチャカ・カーンやジェームス・ブラウンといった人達を紐解いていくと、そこに行き着いたんです。ブラコン(ブラック・コンテンポラリー)と呼ばれたジャンルの音楽が自分達の歴史や文化から切り離せない音楽だということを理解するようになってからは、日本人がなぜああいう風に歌えないのかがなんとなくわかりました。でも格好は“それっぽく”してましたよ。女の子だけのアマチュアバンドをしていた時も肌を真っ黒に焼いて、ちょっとでもそれらしく見えるようにしていた時期もありました。どこかわかってたつもりになってたんですよ。
その程度だったのが、「Sing,Harlem,Sing!」の出演で去年の秋にN.Y.に行き、初めて教会で日曜日の礼拝を見せて頂いた時に、「これが毎週ここで行われていて、皆、自分達がなぜここにいるのかということを毎日考えながら、ここに暮らしているんだ」と衝撃を受けたんです。今まで触れていたものの重みも全く違えば、求めてきた結果のあり方も違うことに気づかされました。大事な部分を本当に何にも知らずに私は何年も生きてきたんだと思いました。「チャカをコピーしてるんだ。」と言っていた20代から、この教会に行き着くまで、何も知らなかったと。
皆さんも一度教会に行かれてみると、何か感じることがあるのではないでしょうか。
(後編に続く)
浦嶋りんこさん特別出演予定の“ブラック・ミュージカル・コンサート”
タマホーム special VY HIGGINSEN presents
『Sing,Harlem,Sing!』
2008年10月11日、12日の東京公演を皮切りに、全国各地で公演が行われます!
ゴスペルの本場、N.Y.・ハーレムのアポロシアターで絶賛されたステージがスケールアップして日本に初上陸!
「Mama,I Want To Sing」のヴァイ・ヒギンセンが贈る、名曲満載のステージです。
【出演】ヴァイ・ヒギンセン/NYハーレム・ゴスペルシンガーズ
【特別出演】浦嶋りんこ
公演スケジュールなど詳細はコチラ!
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