浦嶋りんこさん(後編)
インタビュー後編ではポップスとミュージカルの作詞をする上での意識の違い、オリジナル・ミュージカル「VIVA! Forties」が始まったきっかけ、「VIVA! Forties」のテーマとも関連した映画のお話、「VIVA! Forties」を毎年、続けてきている中で感じる確かな手応えについて、ミュージカルの核となっているメッセージなど、力強く生きるヒントが詰まったインタビューとなった。
(聞き手・写真:近浦啓(クレイテプス)/ 収録:2008年6月9日)
"自分の中にある引き出しを開けることでしか、作れない"
―ゴスペルは、黒人の教会には楽器が備え付けられていなかったから、礼拝でアカペラが主体になり、発展したという話を聞いて、そういうことも全て音楽につながっているんだと以前感じたことがありました。 ビリー・ホリデイや、エラ・フィッツジェラルドは、人生だけを見るとすごく壮絶な人生を送っているのに、どうして音楽はあんなに優しいんだろう?と思うんです。浦嶋さんが作詞など、音楽を作る時、自分の人生が反映されるということはありますか?
私はそれしかないですね。想像して「こんな人生を歩んだかもしれない」ということでは詞を書けないんです。自分の中にある引き出しを開けることでしか、作れないかもしれません。ですから、そこから出て来るものは自分の経験に付随した歌詞やストーリーが多いですね。
ポップスの歌詞というのはメタファ的な表現が多いと思うんです。自分の人生を何かに置き換えたり、その時の感情を何かになぞらえたり。美しい言葉で言うことで、何かをより美しく感じさせたり、これまでと違って見えるようになる、そういう面白さがありますよね。ミュージカルは目の前にいるお客さんに、何かを伝えることに、比喩はあまり関係がなくて、使うとかえってテンポが一つずれるんです。例えば「好きだ」という感情を伝える時、ストレートな言葉で伝えないとお客さんに考える時間ができてしまって、テンポがずれてしまうんです。そのストレートさがミュージカルの歌詞を書く上で恥ずかしいところでもあるんです。ミュージカル「VIVA! Forties」を一緒にやっている深沢桂子さんにも、最初の頃、書いた歌詞についてわかりにくいと指摘されたことがありました。「これではお客さんが考えなきゃ聴けなくなってしまう。そうなったらだめ。」と言われたんです。それで、なるべくストレートに、ストレートに、と気をつけて書くんですが、あまりにストレートすぎると、やっぱり書いていて恥ずかしくなるんですよ。
でもこの経験がポップスとミュージカルを自分の中でしっかり差別化できることにもなって、私自身にとっても大きな収穫になりました。
―そのオリジナル・ミュージカル「VIVA! Forties」が始まったのは3年前ですよね?
はい。今年で4回目です。ミュージカルの作品を劇場で行うというのは、なかなか大変なことなんです。ですから、最初は深沢さんと二部構成という形で構成して、一部は私のソロライブ、二部はプチミュージカル風という形にして、ライブハウスで行ったんです。そこからは4年経ってますね。
博品館での最初の公演ではミュージカル部分を増幅させて、一本のミュージカルとして作ったという感じです。
"愚痴で終わらせるのか、何かを創作しようとするのかの違い"
―ライブハウスでやられた時にもテーマは掲げてらっしゃったかと思いますが、最初のスタートの経緯はどういったことだったんでしょうか?
深沢さんはミュージカル「RENT」に参加した時の音楽監督だったんです。不思議なことに、何度か仕事をご一緒させて頂く機会があって、それから何年かしてから、個人的に一緒に食事したりするようになったんです。ある日二人で食事をしながら、二人の人生観などをお話していくうちに、だんだん"ぶっちゃけトーク"もするようになって・・・。
二人とも、プロとしてやってきた中の緊張感や疲れも当然あって、そんな愚痴を盛り込みがらの話をする中で、「今日は、ここで話をして、「さあ、頑張ろう」と思えるけど、時間が経てば、また話をする前の感情に戻ってしまう。それはもうやめましょう。今日のことだけで終わらせないためにも、「何かをやる」という約束をして、計画をしよう」「オファーが来て初めて成り立つ仕事ばかりでなく、自分達が自ら創作していくということはとても大事。」そういう話になり、最初のライブをやることに決めたんです。
ですから最初は愚痴から始まったんです。ただ、愚痴で終わらせるという楽しみもあるんですよ。女性はおしゃべりが大好きですから、何時間でもおしゃべりできますし。飲みに行って、別れればいいのに・・・と思う彼氏の話を何時間も聞いたりすることは、女性はよくありますよね(笑)。でも、その「言葉を吐き出す」という作業はとても大事なんです。自分の言葉で言うということが、いつしか自分を言い聞かせていたり、口に出して言っている事で再認識したり。そういうことはたくさんありますから、「話す」ということはとても大切なことなんです。
このミュージカルはそんな女同士の会話の中から生まれたことなので、女の本音でもあるんですけれど、その会話の中から具現化するということを、するかしないかという違いは大きいですよ。愚痴で終わらせるのか、何かを創作しようとするのかの違い。ですから、形にしなきゃいけないということで始めたんです。
"女性の価値って世界のどこでもあまり変わらないんだ"
―そのスタートの状況と、「VIVA! Forties」というテーマは密接に関連してますね。
そうですね。実はテーマと関連している映画もあるんです。
深沢さんが仕事やいろんなことで落ち込んでいる時に映画をたくさん観たそうなんです。その中でも「デブラ・ウィンガーを探して」という映画を観て、深沢さんはとても感動したそうなんです。深沢さんに「この映画、すごくいいから観てみて。自分達みたいにプロとして何かやっている人は観るべき。」と薦められて、私も観に行ったんです。映画は「グラン・ブルー」で、ジョアンナ役を演じていた、ロザンナ・アークエットの監督作でした。
「グラン・ブルー」で観た彼女は、可愛らしい女性だったのが、この映画で観た彼女は、女優として中堅どころになって、仕事に悩みながら、同じように何かしらの悩みを抱えたハリウッド女優やヨーロッパの女優へのインタビューを延々と綴っている、そういう映画でした。観ていると、これほど美を追求し、個性やキャラクター、女優としてのテクニカルな部分を、監督達にたくさん引き上げてもらった女優ですら、「ハリウッドってブランドよね。」なんて話をしているんです。「なんだ、女性の価値って世界のどこでもあまり変わらないんだ。何の仕事をしていても・・・」そう思いました。そういう結論にみんな行き着いた上で、どう生きていくかを自分なりにそれぞれ考えているんだと知った時に、この映画を薦められた理由がわかった気がしました。
私の方も、3年かけて作っていたアルバム・「抱擁」の曲が6曲ありましたし、それらの曲をライブで歌うことに決めたんです。それで二部構成という形のライブができたんです。そのライブを現在「VIVA! Forties」の主催してくださっているシーエイティプロデュースの方が観てくださっていて、「このミュージカルをもっと膨らませんか?」と提案してくださったんです。 最初のライブでは100人のお客さんが入る会場が満席になるのか?とすごく心配でしたけれど、すぐに完売になったので、次の月に再演をしたんです。そして、そこから1年かけてきちんとミュージカルを作りました。今、演出をやって頂いている鈴木勝秀さんが、その時「このテーマはこのまま崩さずにやるべきだ。」といってくださって、博品館での一回目の公演の監修に入ってくださったんです。そして、二回目からはずっと演出を担当してくださってます。
"確かな手応えが自分達を新たに突き動かしてくれている"
―毎年、続けてきた中で感じる反応はどういうことでしたか?
初回から深沢さんは「私は動員三千人を目指す」とおっしゃっていました。私の方は「三千人?!私達二人で?!」とびっくりしながら聞いていたんですけど、彼女の中ではこの作品で絶対三千人動員するんだという強い想いがあるんです。その目標を達成するために、毎年やると決めて、ここまで続けてきているんです。スタート自体は女同士の愚痴から始まったことだったのに、劇場での初演を博品館でやることができました。さらに、足を運んでくれたお客さんのリピート力も凄いですし、頂いたコメントもすごく熱かったんです。「すごく元気になった」という女性もいれば、「私だけじゃなかった!」という人もいる。そういった確かな手応えが自分達を新たに突き動かしてくれているんですよ。 世の中に同じことを想う人達はたくさんいて、私達は具現化する術を持っていたから、それができたけれど、そうじゃない人たちがたくさんいるんだと実感しました。そういった人達と「時間や想いを共有できる場所」、この「VIVA! Forties」がそういう場になるんじゃないかという自負もあります。「VIVA! Forties」は観てさえもらえれば絶対に共感して頂けるという確信があるので、一人でも多くの人に観てもらいたいですね。そして可能であればいろんな場所で上演したい。その想いが日に日に強くなりましたね。
"生きることはしんどいけれど、生きる"
―観られた方の想いがインターネット上にもいくつも見られましたが、本当にとても熱いですよね。「絶対にまた来ます!」というコメントも非常に多かったですし、あれだけ熱いコメントをもらえるというのも凄いことだと思います。このミュージカルは40代の女性に限らず、30代、さらには20代の女性なりの捉え方があるでしょうね。 「VIVA! Forties」で一番の核となっているメッセージはどういったものですか?
「生きる」ということでしょうか。生きることはしんどいけれど、生きる。どういう風に生きるかはそれぞれ違うけれど、「生きていく」というエネルギーを自分自身が作っていくことが大切だということを伝えたいんです。
―自分を肯定できる強さ、とも言えるのかもしれないですね。「自分はこれでいいのか?」と皆さん悩み続けて成長していると思うんです。そこで、例えば「VIVA! Forties」を観た時、「これでいいんだ」と思える何かをそこで渡しているような気がします。
ミュージカルって、起承転結の結がきちんとあれば、そこに自分を投影することもできるんです。「こんな風なものの考え方をした方がいいのかな」、それとも「こういう考え方があるから、自分のこの考え方も存在できる」と思ってみたり。見方はさまざまだと思いますが、皆さんそれぞれが、人生をどう捉えていくかということをそこで考えられたらいいなと思うんです。今、私達が生きている2000年代の中では、私達が先駆者となる訳ですよね。データのない中を進んで行くのって苦しいと思うんです。データを自分達が作っていかなきゃいけないのだから、しんどいに決まってます。「しんどいけど頑張りましょう!」と言いたいんです。
仕事がある・ない、結婚してる、していない、子供がいる、いない、いろんな方々が共通して思っているのは同じ年代であり、女性であり、大きく言えば人間であるということ。共通点やそうじゃない点を笑ったり考えたりしながら、見て頂きたいなと思います。
オリジナル・ミュージカル「VIVA! Forties」at スパイラルホール 8/29~8/31上演!!
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浦嶋りんこさん特別出演予定の“ブラック・ミュージカル・コンサート”
タマホーム special VY HIGGINSEN presents
『Sing,Harlem,Sing!』
2008年10月11日、12日の東京公演を皮切りに、全国各地で公演が行われます!
ゴスペルの本場、N.Y.・ハーレムのアポロシアターで絶賛されたステージがスケールアップして日本に初上陸!
「Mama,I Want To Sing」のヴァイ・ヒギンセンが贈る、名曲満載のステージです。
【出演】ヴァイ・ヒギンセン/NYハーレム・ゴスペルシンガーズ
【特別出演】浦嶋りんこ
公演スケジュールなど詳細はコチラ!
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